予算作成での大失敗10選 前編

今日はタイトルの通り「予算作成で失敗したこと10選」という内容で書きたいと思います。

「こうやって乗り切ったらうまくいった!」「こんな風にやれば良い!」

といった成功例は記事にたくさんある気がするのですが、「こんな失敗をやらかした」「○○というミスを犯してしまった」といった自らの失敗を語った記事ってあまりない気がするんです。もちろん、予算作成という仕事の特性上、コンフィデンシャル(社外には公開できない)な情報ばかりなので、あまり表に出しづらいというのもあると思います。

ボクは今、オンデーズという会社に勤めるのですが、うちの社長の名言というか格言として、こんなのがあります。

成功はアート、失敗はサイエンス

要は、「成功はまねできない、でも失敗は避けられる」ということです。オンラインメディアの取材では、こんな超わかりやすい例を話しています。(あくまで分かりやすい例として抜粋します)

 例えば、かわいい女性店員が、男性のお客さまに「すごく似合います―」って親しげに話しかけて接客したら売れたとします。でも、これを成功事例として文章にして研修しても……おじさんの店員が若い女の子のお客さまに同じ対応をしたら、下手するとセクハラになりかねない(笑)。メガネ店の場合、お客さまも店員もさまざまな年代や性別が混在するので、成功事例を共有しようとしても、前提条件のパターンがあまりに多すぎるんです。

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2001/04/news009.html

以上を踏まえ笑、今回の記事では、「こんな失敗をボクはしてしまったことがあるので、皆さんは避けられるように気を付けてください」という意識で書きたいと思います。

題して「予算作成での失敗10選」。

本記事では、予算作成を進める上での失敗4選を書き、残り6選は追って別の記事で記したいと思います。

 

こんな方法で予算作成

まずはじめに私が担当する全社予算の作り方を簡単に紹介したいと思います。

が、、、本気で説明すると超絶長くなるので、よろしければこちらの連投ツイートをざっと眺めてくださいませ。

オンデーズでは国ごとに上記のブロックに分け、合算しています。それぞれのブロックごとに考慮する要素やパラメータが異なるので、それに応じたモデリングとなっているのです。そして、この予算作成業務を全てExcelで行っています。

失敗10選

では、ここから失敗10選をご紹介したいと思います。

その10選を先にお見せすると以下の通りです。

①前提条件のすり合わせ不足
②成行成長率の妥当性が抜け落ちていた
③部門別・国別・年別推移などができていなかった
④エクイティーストーリーが抜け落ちていた
⑤様々なExcelファイルが存在し、別ファイルから値張りされるシートが乱立した。
⑥エラーチェックが漏れていた
⑦ベタ打ちを乱発して、メンテが超大変になった(不要になったコスト計上したままになった(そして、突然見込値が想定以上に上振れした)
⑧GoogleFileStreamを利用中、ネットワーク切断されて、半日分のファイル更新作業がぶっ飛んだ。そして死んだ。
⑨不要とだと思ってたシートを削除してしまい、あとで、#REFエラーをたくさん発見した
⑩外部参照していた(外部参照リンクを削除したあと、何の値なのか分からなくなった。

これらを予算プロジェクト(方針決めや構想の策定、プロジェクトの進め方)だけでなく、Excelというツールを使う上での失敗談もここでは触れたいと思います。全てを一つの記事で網羅すると、そこそこ長文になりそうなので、記事を二つに分けてご紹介させていただきます。今回の記事では、まず①~④に触れさせていただきます。

①〜④予算プロジェクトの進め方

予算プロジェクトに関わる内容について。主に次の4つを一つずつご説明いたします。

前提条件のすり合わせ不足

予算を考える上での大前提のすり合わせです。

特に一年前から世の中はコロナによって、がらっと状況が変わりました。そして今もその尾を引いていて、世の中全体がまだまだ不透明・不安定になっています。消費行動も大きく変わってしまいました。

そんな時何が大事かというと、前提条件のすり合わせです。今の状態が続くと考えるか、それともコロナ禍前の状態に戻ると仮定するのか、それとも、もっと悪化するのか、はたまた購買行動が大きく変わってこれまでとは全く異なる市場環境になるのか。そういった前提・共通認識を経営陣と積み上げることがとても大事かと思います。

予算を作る上では、まず初めにこれをやるべきなんですが、そこの整理がないままに手を動かし始めてしまったことがあります。

幸いにもプロジェクト開始直後に前提条件のすり合わせを行えたので、大きな手直しが発生するということは避けられたのですが、一番初めに「来期はどんな大前提を土台にするか」を経営陣と握り、言語化しておくことが大切かもしれません。

成行き成長率の妥当性チェック

これもやってしまいがちです。予算の設定は、適度なストレスになっているか、頑張れば届くかもしれない、という水準になっていることが大事だと思います。今年の実績を見て来年の水準を考えることも大事なのですが、もっと長い目で見てそれが妥当と言える水準なのか確認すべきです。例えば、過去3~5年の年平均成長率実績を出し、来年の予算設定がその延長線上にあるかのチェックしておいて良いと思います。

しかし、私自身、そのような確認が後付けになってしまったことがあります。「良かった…。過去5年と同じ推移をたどる成長率設定になっていたぜ、ふぅ」という感じ。そうではなく、「これまでの成長率を来期も目指すとするならば、過去からのトレンドを鑑みて〇%成長を目指すべきです」と初めから提言し、議論の土台を用意しておくべきでした。

部門別・国別・出店年別の推移や比較が未実施

 

全体の成長率が決まった後やるべきことは、これです。部門別や国別などのある特定のグループに分けて、過去からの推移や比較すべきです。

ボクの失敗は、これを最後の最後のぎりぎりまでやってませんでした。もっと正直に言うと、ファンドさんから見せてほしいといわれてやり始めました。なぜこれをやったら方が良いか。二つの意味があります。

まず一つ目にエラーチェック。

分解して数字を見ることで、どこかに歪な数字がないかの確認ができます。私の例としては、これをやってなかったために、ある店舗の数字が誤って過大に設定されていたことに気づけなかったのです。400店舗分ありますから個店ごとに経企だけでは見切れません。なので、ある程度のブロックに分けて、説明できない異常値がないか確認する必要があります。

実際、部門別に切り出した時に、そのうちの一つの部門が、異常なEBITDA成長率を示していたことに気づいたのです。そこで、なぜだろうと、ドリルダウンしてみていった時に、「なんか、めちゃくちゃ売上が増えてる店舗があるな…」となり、よく見ると、客数の成長率設定の桁が一つ多い、と言うことの発見に繋がったのです。(これ見つけた時は、冷や汗もんでした笑)

次に、二つ目の理由として、部門毎の推移を見れるからです。

その成長率、費用、売上が妥当な水準か、課題があるとしたら、どの国のどの部門か、などがある程度浮き彫りになります。

合計値としてはなんとなく良さそうな感じでも、いざ分解してみると、事業全体の伸びに対して間接部門の人件費の伸びが著しすぎることに、気づいたりできるものです。他にも、「グループ全体の売上がこんなに増えるのに利益はこれだけなの?」との問いがあった際も、「それは、〇〇部門が当初の想定よりも売上が伸びておらず、マージンが低いからです」と答えることに繋がりました。やっぱりこういうのは、早いうちに作り、異常値や違和感、傾向を発見できるようにしておくのにこしたことはないですね。

抜け落ちたエクイティストーリー

 

最後に、エクイティーストーリーをイメージできてなかった点です。これはほんと大失敗でした。

次期の予算、そして進行期の着地見込の算出に没頭し、進行期を起点にした前後1〜2年の利益推移をどう作るかが、完全に抜け落ちていました。

経営企画の1番のミッションは、企業価値向上の支援をすること。企業価値向上には、売上や利益、成長率が大切なのはもちろんですが、それに加えて将来が見通しやすいことも重要です。そういう観点でいくと、過去から今までの利益水準が、階段上に順調に伸びてることが大事。アップダウンが大きいと先が見通しづらく、不確実性が高いとみなされ、高い株価はつきにくい要因になります。

よって、「今期と来期でどう数字を作るか」という戦略的な目線が必要になります。それがすっぽり抜け落ちていました。例えば、今期の見込みは想定よりも好調だから、来期に計上予定だった費用を今期に落としてしまおうとか、逆に今期の見込みが予算未達になりそうだから、来期にずらせる費用はないか検討してみようとか、そう言った財務戦略が必要になります。それをより主体的にリードできることが、経営企画としての付加価値になるはずです。

最後に。

改めて、本記事では、予算作成における失敗談の一部をご紹介いたしました。「予算作成はこうすれば良い!」という内容でもも皆さんにとって意味のある記事になるかなと思ったのですが、やはり予算作成って会社やステージによって状況は様々かと思います。

一方で、やってはいけないこと、失敗につながるやり方、というのはおそらく多くの会社にある程度普遍的に当てはまるんじゃないかと考え、今回の記事を書くに至りました。

10あるうちの4つをご紹介しましたが、次の記事では残りの⑤~⑩の6つをご紹介したいと思います。まだ書いてませんので、今しばらくお待ちくださいませ~…

⑤様々なExcelファイルが存在し、別ファイルから値張りされるシートが乱立した。
⑥エラーチェックが漏れていた
⑦ベタ打ちを乱発して、メンテが超大変になった(不要になったコスト計上したままになった(そして、突然見込値が想定以上に上振れした)
⑧GoogleFileStreamを利用中、ネットワーク切断されて、半日分のファイル更新作業がぶっ飛んだ。そして死んだ。
⑨不要とだと思ってたシートを削除してしまい、あとで、#REFエラーをたくさん発見した
⑩外部参照していた(外部参照リンクを削除したあと、何の値なのか分からなくなった。

皆さんがボクと同じ失敗を繰り返さないよう、そしてこのタフで長期にわたる予算作成というプロジェクトの手直しが少しでも減らせるよう、ご参考になれば幸いです!!

ではでは~!

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